アーティスト、妄想監督 市原えつこ氏 インタビュー

 

 

普段はどんなこと(お仕事)をされていますか?

アーティスト、妄想監督を名乗っております。
デザイナーとして新卒入社したYahoo! JAPANを今年の4月に退職して独立し、作家業、企画、デザイン、執筆、奇祭のプロデュース、講演・ワークショップなどいろんなタイプのお仕事をさせていただいています。

 


どういった経緯でこのプロジェクトに参加しましたか?

会社を辞めて独立した初日にイノラボ阿部さんに突然SNSでお声がけいただき(はじめFacebookメッセンジャーが勝手にフィルタリングして気付いていなかったところ、Twitterからもプッシュいただけるという挟み撃ちw)、会社員の頃から「面白そうな組織だな」と思っていたのでホイホイとイノラボに遊びにいったのが事のはじまりでした。
イノラボ代表の森田さん、阿部さんと「クールジャパンにはじまる東京中心のコンテンツ群じゃなくって、もっと土着の儀式とかお祭りとか、日本人にとって透明化して蔑ろにされているぐらい当たり前なものを世界に発信した方がいいですよね、日本人が気付いてない資源ってたくさんあると思うんです」みたいな祭トーク、日本文化トークで盛り上がったのですが、その時はこんなに大規模な案件になるとは思っておりませんでした。
ある日イノラボに行ったらきれいなお姉さん(川内さん)がおり、阿部さんに誘われプロジェクトにジョインして下さるそうで、きれいなお姉さんが好きなのでもともと高かったモチベーションがさらに向上しました。はりきって初期のラフ案として『シニアカルチャー - Respect先人』『にっぽんの祝祭をアップデート』『SAVE NAMAHAGE』『満員電車パーティー』『おじさん人類学』といった謎の項目を提出。今読み返すと意味不明で具体性ゼロのアイデアだったのですが、阿部さん・川内さんの企画力によりみるみるうちに具体的なスケジュール、予算感やインバウンド施策としての価値などが算出され爆速でプロジェクトとしての形を成してきて驚愕しました。JETROのオリンピック・パラリンピック調査事業プロジェクト募集のコンペティションをご提案いただき、初夏にみんなで全力で応募資料を作成したところまさかの通過。きれいなお姉さんがかなりのやり手だったことがあとから判明しました。
その時点では対象のまつりも未確定だったのですが、阿部さん、川内さん、市原で様々な奇祭をリサーチした結果、やはりビジュアルアイコンとしてのナマハゲの魅力やポップな存在感、そして背後に香るディープな精神性から「第一弾は絶対にナマハゲがいい!!」と満場一致。川内さんが電凸で男鹿市役所にアポを取り付け、秋田へとび、男鹿市役所に「お宅の娘さんをください!!」みたいな勢いで相談に行ったところ「あ、特にナマハゲという存在にライセンスがあるわけでもないので別に大丈夫ですよ」とすんなりと受け入れてくださり8月末に本格的にプロジェクトが開始した形になります。その日に男鹿で飲んだ酒はとてもうまかったです。

ちなみに普通、こういうプロジェクトに外部からスカウティングする場合、ある程度実績を積んだ方を選出すると思うのですが作家活動の実績は多少あったものの、独立したばかりでクライアントワークの実績がゼロだった(しかも色々きわどい作品をつくっている)自分を腹くくっていきなりスカウトした仕掛け人の阿部さん、OKを出した森田さんは相当勇気があるなと思いました。
都市計画・文化事業系のバックグラウンドを持ちつつ戦略コンサルで磨いたバトル能力を発揮しまくっている川内さん、技術力を兼ね備えつつ凄まじいイマジネーションを持つプロデューサーの野崎さんなど、イノラボで出会う方がみなさんいい意味でとてもクレイジーで楽しいです。

 


このプロジェクトにおけるあなたの役割を教えてください。

「Japanology Researcher」としてイノラボに参画させていただき、プロジェクト発足にあたっての企画立案とリサーチ、「都市のナマハゲ」というコンセプトの構想設計、アート作品制作にかかるディレクションを担当しました。
ひらたく言うと、見聞きしたものから妄想をふくらまし、「こういうのがやりたいです」とイメージを各所に言い続け(場合によってはプロトタイプを作成し)、完成まで見守る役割です。私はこれを妄想監督業と呼んでいます。
個人の作品制作だと「これやりたい」となった後は自分の拙い素人仕事のつぎはぎでやることも多いのですが今回は戦略マネジメント、プロモーション、テクニカル、映像、ファッション、造形、俳優、モーショングラフィックなど各方面のプロフェッショナルの方が予想の相当斜め上のクオリティで遂行してくださり、これほどありがたいことはなかったです。出てきたアウトプットにだいたい興奮しており、さながら社会科見学のようでした。

また、映像ではど素人ながら初の演技もさせていただきました。お見苦しいですがぜひご覧ください。自分はこわくてしばらく見れそうにないですが。

 
 

 

最初にこのプロジェクトの概要を聞いたときどう思いましたか?

逆に概要をつくる側だったので、各所へご依頼の際に何度も説明したのですが
多様な組織、多様な要素、多様なバックグラウンドが融合したプロジェクトで、大変説明しにくかったですw(ナマハゲ?オリパラ?テクノロジー・・・?)
毎回「意味わからないって言われなかろうか」とドキドキしながら話しておりましたが、いろんな方が予想以上に趣旨をご理解・共鳴してくださり感動しました。
そして、気づけばそれこそ妖怪や式神使いのような才気溢れる方が続々集合したのにも驚きました。元NHK_PRアカウントの中の人として著名で私もファンだった浅生鴨さん、妖怪研究家でもある凄腕の映像ディレクターの松宏彰さん、「株式会社 祭」というこのプロジェクトにぴったりすぎる名称の映像会社の朗らかなプロデューサーの渡邉雅史さん、バーチャルとリアルの境界をただようような服作りをしているchlomaさん、プラモデルを利用し空想を具現化する作品をつくるアーティスト・造形作家の池内啓人さんなど。
化け物のようなバイタリティや創造性、そして「異界リテラシー」を持つ面々を見て、これは見たことのないナマハゲ生まれるやつや、と確信しました。

 


このプロジェクトに関わる前のナマハゲのイメージを教えてください。

「秋田のナマハゲが後継者不足の危機に瀕しているらしい」ということを聞きかじった程度であまり詳しくは知らず、男鹿市役所ではじめてお話を詳しくうかがった際に目から鱗でした。
特に面白いなと思ったのが、
・神のようでもあり、鬼のようでもあり、いろいろと諸説あるものの実態は謎の存在であること
・「ナマハゲの姿の規格」のようなものはなく、集落ごとにまったく違ったナマハゲの姿があるということ
・ナマハゲ行事という仕組みは非常に合理的であり、子供のしつけや集落の共同体の維持など様々なメリットがあること
でした。ナマハゲはとても奥が深いテーマです。
このような来訪神行事は日本各地、いや世界各地に点在するらしく、土地をこえた不思議な共通項からこの世界の不思議を見つけた気がしてワクワクしました。
そしてナマハゲについてより深く理解したいと、先日イノラボのみなさんと「ナマハゲ伝道士認定試験」を受けに行きました。ガチで筆記試験受けました。まだ結果は出ておりませんが、合格の暁には立派なナマハゲ・エヴァンジェリストとして頑張りたいと思います。

 


最後にひとこと

イノラボという組織がとても面白くて、受託型のクライアントワークとは違った関わり方(共同プロジェクト)としてアーティストが企業と協同する、というのはよく考えたらかなり変わった事例な気がします。一般的な受託プロジェクトだと先方の仕様通りに実装するのが通例だと思いますが、そうではなく組織の内外で創発的にプロジェクトが進んでいく感じが、自分でも体験しながらとても興味深かったです。個人的には理想的な共同のスタイルだなと思いました。
国内最大手の広告代理店である電通のプロモーション力、テクノロジー企業であるISIDの技術力の融合ゆえに実現できることも多そうです。

また、「外国人の目から見た日本という島国」の世界観がすごく好きで、「イメージ・ファクトリー ―日本×流行×文化」や「エロティック・ジャポン」など外国人評論家の書いた日本文化論を大学生のころに好んで研究対象として取り扱っていたので、個人的にはようやくライフワークにたどり着けた!みたいな感覚のあるプロジェクトでした。あまり「仕事」という感覚がなく、単純に楽しいからやっていた印象が強かったです。
阿部さんにお話をいただいたのが4月で、よく考えると結構な長期プロジェクトですが、モチベーションはずっと高く保てました。

あと今回チーム全体で謎の怪現象のようなことが起きることが多く、
例えば秋葉原ナマハゲのファッションを制作いただいたchloma鈴木淳哉さんが秋葉原のナマハゲのデザイン画を描いているそのタイミングで私の夢に鈴木さんが出たりしてきました。
企画の浅生鴨さんはなぜか都内で何度もナマハゲに遭遇したようです(『代々木公園にナマハゲがいます』という件名のメールが関係者に飛んできました)。
ナマハゲが引き起こす怪電波や磁場のようなものがあるのかなと思いました。

 
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